「ヴォーグ」を擁するコンデナスト 音楽配信会社出身の新CEO就任でどう変わる?

経営統合した米コンデナスト(CONDENAST)とイギリスを拠点にするコンデナスト インターナショナル(CONDENAST INTERNATIONAL)のグローバル最高経営責任者(CEO)として、米大手音楽ストリーミングサービス会社パンドラ(PANDORA)のロジャー・リンチ(Roger Lynch)前社長兼CEOが就任した。同氏は、パンドラのほかにも衛星放送のディッシュ・ネットワーク(DISH NETWORK)でエグゼクティブ・バイス・プレジデントを、テレビのストリーミングサービスのスリングTV(SLING TV)ではCEOを務めてきたが、出版メディアの経験はないことから、コンデナストが映像やデジタルメディア事業の拡充を念頭に人選をしたことがうかがえる。

コンデナストはデジタル化が遅れたこともあり、2016~17年におよそ2億5000万ドル(約277億円)の損失を計上したと見られている。18年に赤字額がやや減ったものの、まだ利益を上げるにはいたっていない状態だ。遅ればせながらも進出したユーチューブ(YOUTUBE)やネットフリックス(NETFLIX)でのコンテンツ事業が成功を収めたため、同社がデジタルや映像分野をさらに強化する方向に進むことは想像に難くない。

しかし、リンチ=グローバルCEOに期待されているのはそれだけではないだろうという声が社内で出始めているという。これまで、コンデナストは損失を減らすための施策として主にコスト削減や事業縮小を行ってきた。米コンデナストとインターナショナルは統合によって1つのデジタルプラットフォームに移行する予定だが、これは両社のユーザーがまとまることで広告主にとってさらに魅力的な存在になるということ以外にも、バックエンドの運営が統合されることによる節約効果が見込まれている。統合は非常に複雑な工程になることが予想されるが、経営陣の誰もそうした経験がないため、IT技術に強いリンチ=グローバルCEOが選ばれたのではないかというのだ。なお、社外の人材がコンデナストのCEOに就任するのは今回が初となる。

仮に、同氏がそうした“大手術”のために期間限定で任命されている場合、デジタル化への移行を推進したパメラ・ドラッカー・マン(Pamela Drucker Mann)=チーフ・レベニュー兼マーケティング・オフィサーが次期CEOになるのではないかとウワサされている。また、アナ・ウィンター(Anna Wintour)=アーティスティック・ディレクター兼米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長の名前も挙がっているという。アナが年若いリンチ=グローバルCEOの下につくことをよしとしないのではないかという憶測に基づいたウワサだが、逆にファッション業界出身ではないリンチ=グローバルCEOが、コンデナストでのアナの権力の大きさなどを不当だと思うのではないかという向きもあるという。コンデナストが真の意味で統合されるまで、だいぶ時間を要することになりそうだ。