アイウエア企業ジンズ(JINS)の2018年8月期の売上高548億円のうち13%に相当する72億円が海外事業で、前期比38%増の高い伸びを見せ、初めて黒字化した。海外の売り上げのほとんどは、130店舗を展開する中国事業だ。9月に香港にも進出し、アジア市場はさらに拡大基調にある。上海と瀋陽にある中国法人のトップを務める宇部真記ジンズ チャイナ社長に中国ビジネスのこれまでの成長と今後のビジョンを聞いた。
中国進出の経緯は?
2010年12月に、中国・瀋陽に出店したヤマダ電機の2階に1号店をオープンしました。当初、売り上げは苦戦しましたがしばらく様子を見て、3店舗目の天津店が好調で手応えをつかみ、12年に上海の伊勢丹と森ビルの商業ゾーンに相次いで出店しました。このタイミングで、私が中国ビジネスの責任者として着任し、瀋陽と上海の会社のトップを兼務しています。現在、9人の日本人社員が駐在しています。
その後、中国ビジネスは一気に拡大している。
今、中国ビジネスは軌道に乗り、ここ数年は年30店舗出店して、現在の店舗数は135、従業員数は約1000人に成長しました。売り上げは年々伸びており、今年も30店舗増える予定です。
フレーム価格とレンズ価格を合わせた3プライス設定の販売システムが新しかった?
399元(約6000円)、599元(約9500円)、799元(1万2000円)のセット価格で商品を販売しています。「ジンズ」が出店した後、類似店が増え、現在この販売方法は一般化しています。類似店の多くが淘汰されましたが、現在の主なライバルはアオジョ(AOJO)、ローホ(LOHO)、ルック(LOOK)などがあり、日本の「ゾフ(ZOFF)」と「オンデーズ(OWNDAYS)」も進出しています。
中国の売り上げ一番店は?
天津の商業施設ジョイシティ(大悦城)が一番店で、ピークの月は約2500万円を売り上げました。その次は、エリアに約40ある上海の店舗が続きます。
ライバルが多い中で、「ジンズ」が差別化している点は?
商品のファッション性より、むしろ日本企業として定評のある安心・安全な品質と丁寧なサービスをしっかり打ち出していることです。ライバル他社のことは意識していません。商品はほとんどが中国製ですが、1790元(約2万8000円)の日本製チタンの高額フレームも売れており、生産が追いつかないほどの人気です。
中国と日本の消費者の違いは?
中国はアイウエアのトレンドが明確で、消費者は日本人より圧倒的にトレンドに対する意識が高いということです。日本人は自分に似合う商品を選び、結果としてシンプルでベーシックなデザインに偏りがちですが、中国人は自分に似合っているかは二の次で、今流行のデザインに飛びつきます。日本ではあまり売れなかったキャッツアイのフレームが、中国では大人気となりました。今はメタルのオーバル型フレームやフロントが六角形のモデルがよく売れています。中国では、日本のMDは通用しません。また、売り上げ全体に占めるサングラスの購入比率が高いことも特徴で、日本が3%程度なのに対し、中国は約15%で、日差しが強い夏は35%になることもあります。アイウエアがファッションアイテムとして浸透している証拠です。
中国の出店はどこまで伸びる?
ひとまず300店舗まで出店できると見込んでいます。デジタル化が急速に進んでいる中国で、Eコマースによる眼鏡の購買がどれだけ高まるかを注視しています。
9月に海外5地域目となる香港に出店した。
2店舗出店し、上々の滑り出しです。場所はまだ公表できませんが、あと3店舗の出店が決まっています。市場規模から考えると20店舗まで拡大できると思います。香港での事業拡大の大きなネックとなるのが、検眼ができる資格を持った測定士の常勤が義務付けられていることです。香港に約2000人しかいない測定士は、ライバル店との人材確保の競争により、人件費が高騰しています。能力が高い人は眼科医レベルで、年収1000万円を超える場合もある。測定士の争奪戦が今後の事業拡大の肝になると思います。「ジンズ」は常にイノベーションを起こす会社であり、そのスタンスは中国でも変わりません。